心身医学のあれこれ

「心身医学は、なんらかの体の異常や症状を訴える患者について、その原因を心身両方面から、さらには気候、風土などの社会環境の条件も考えに入れて総合的に診断し、またその治療にあたっては身体的な面のみならず、心理社会的な面にも力を入れるべきである。それぞれの思考の個別性に応じた適切な治療を行なうことを目的としている」これは、私の恩師であり、日本の心身医学のパイオニアであった、故・池見酉次郎先生の考え方を基にしています。このように心身医学では、西洋医学を踏まえながら、病気を単に体の問題としてでなく、体と心の両面から捉え、西洋医学が見落としてきた患者さん1人ひとりの状態に着目し、治療を行なっていきます。それは、ちょうど、水と油に溶媒としての石鹸を使うことで、両者が溶け合うように、西洋医学と東洋医学のもとへ結び付けることを可能にしました。池見先生はこうした業績により、ハンス・セリエ賞を受賞しました。その後、この心身医学の考え方を発展させ、現代医学を基本にしながらも、伝統的東洋医学と心身医学をも合理的に取り入れた「全人的医療学」が生まれました。私の医学的な立場は、この「全人的医療学」に基づいています。それでは、こうした「全人的医療」において、コエンザイムQ lOはどんな位置づけになるでしょう。全人的医療では、従来の普遍性の医療を踏まえながら、個別性の医療を実践していきます。それは、患者さん1人ひとりの状態を正しく把握して、それに見合った医療を行なうことです。しかし、伝統的東洋医学では3000年も前からこうした医療を行なってきました。それを随証療法といいます。証を診るとは、患者さんの体調を的確に把握することを言います。東洋医学では、患者さんの体調を大きく、実証、中間証、虚症の3群に分けます。実証とは、あり余る体力がある状態。虚証は、体力が低下した状態。中間証は、その名の通り、虚実の中間で、中程度の体力の状態を指します。この証がそのまま治療につながり「実証には潟法、虚証には補法」といって、基本的な治療方針となります。「潟法」とは、体力があり余って体の機能が病的に高まった状態を抑制しようとする治療方法です。わかりやすくいうと、病気の原因となっている余分なエネルギーをある程度低下させるように働きます。反対に、「補法」とは、病的に低下した生体反応を昂進させるような方法で、千不ルギーを高めるように働きます。この考え方から見ると、現代医学は手術で腫瘍を「切り取り」、抗がん剤でがん細胞を「叩き」、放射線でがん細胞を「殺し」、鎮痛剤で炎症を「抑える」といったぐあいに、潟法中心の医学です。反対に、伝統的東洋医学や心身医学は、補法に優れています。ではコエンザイムQ lOはというと、千不ルギー代謝を高め、細胞を活性化するので、補法に最適です。補法に用いる薬を「補剤」と呼びますが、私はコエンザイムQ lOを、全人的医療に欠かせない補剤として使用してきました。